カプセル内視鏡で人の顔や姿は写せるのか?ピントは合うの?【教場0】第9話「橋上の残影」ネタバレ感想

2023年6月5日2023年6月26日

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「風間公親ー教場0ー」第9話／「橋上の残影」のネタバレを含みます! ご注意下さい！

2023年6月5日放送のドラマ「風間公親ー教場0ー」第9話／「橋上の残影」では、驚きの「事件の目撃者」が登場しました。今回の「橋上の残影」というストーリーでは、「事件の目撃者」は人間ではなく「カプセル内視鏡」という医療機器でした。「カプセル内視鏡」とは、小腸・大腸の様子を観察するための小型のカプセル状の内視鏡の事で、口から飲み込んで便と一緒に排泄される使い捨ての内視鏡です。撮影した画像は随時電波送信され受信機で画像を受け取る仕組みになっています。そんな「カプセル内視鏡」で犯人の顔や姿を写す事って出来るんでしょうか?　実際の「カプセル内視鏡」について調査してみました。

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なぜ、事件の目撃者が「カプセル内視鏡」なのか?

6月5日放送のドラマ「風間公親ー教場0ー」第9話／「橋上の残影」を観ていない方に、なぜ、事件の目撃者が「カプセル内視鏡」なのか? についてざっくり説明しますと、被害者の男性が犯人に刃物で刺された時に、被害者の男性が腸の検査のために飲み込んだ「カプセル内視鏡」が傷口から体外にこぼれ落ち、「カプセル内視鏡」がその場にいた犯人の顔や姿を写した、という事なんですよ。この写真が決定的な犯罪の証拠となって犯人は観念する、というストーリ展開になっています。刑事モノのドラマとしては画期的なオチですよね～

「橋上の残影」、
原作者の長岡弘樹さん、いいタイトル付けましたよね～

でも今回のドラマを観た人は、

え～、でも
そんな事ある～?!

って思いますよね。ボクもそう思いました。そこで「カプセル内視鏡」について調査した結果が以下になります。

「カプセル内視鏡」で人の顔や姿は写せるのか? ピントは合うの?

体内で移動するカプセル内視鏡 — 小腸内を移動する「カプセル内視鏡」
画像／FREE FOWLS新石垣島ブログ
当画像を二次使用される場合は**コチラをお守りください**

結論から言いますと、
「カプセル内視鏡」で人の顔や姿を写すことは
実際には不可能です。

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「カプセル内視鏡」に搭載された小型カメラはCCDカメラになります。アメリカの医学情報の収集・提供を担当する図書館、「National Library of Medicine (NLM)」の情報によりますと、一般的に「カプセル内視鏡」に搭載されるCCDカメラの被写界深度(DOF)^※1は0cm～3cm程度となっています。

※1　被写界深度(DOF)とは、カメラのレンズがピントを合わせることができる距離の事。

日本では「カプセル内視鏡」は大腸と小腸の内部の様子を観察するために使用されます。「カプセル内視鏡」は大腸や小腸の内壁の状態をカメラで撮影するための医療機器の為、レンズのピントはごくごく手前に設定されているという訳です。

2015年に開発された次世代型「カプセル内視鏡」

動画からもわかる通り、「カプセル内視鏡」は大腸や小腸の内壁を接写しているわけです。CCDカメラのピントも3cm先までしか合わすことができない為、例えば胃の中程度の空間ですら「カプセル内視鏡」にとっては広すぎて、胃の内壁にピントを合わせることが出来ないんですよ。「カプセル内視鏡」が胃の検査に使えない理由はそこにあります。

そんな「カプセル内視鏡」なので「橋上の残影」で描かれたような、体外にこぼれ落ちて地面に転がった「カプセル内視鏡」のCCDカメラが、その場にいた犯人の顔や姿をはっきり写すなんてことは不可能という訳です。

「カプセル内視鏡」は人の顔の撮影では
ピントが合わない
という事になります。

体外にこぼれ落ちた「カプセル内視鏡」が何かを撮影したとしても、それは路面の凹凸の様子位が関の山で、その他の周囲の様子はボケボケ写真でとても犯罪の証拠となり得るものではありません。ドラマでは転がった「カプセル内視鏡」と犯人との距離が1.5mほどの距離がありましたが、ピント合わせの距離が3cmしかない「カプセル内視鏡」であのような画像を撮影することは不可能なんですよ。。。

劇中でも伊上幸葉(演堀田真由)が胃の調子が悪くて病院で受診する際に、カプセル内視鏡が胃や十二指腸には使えない、という事を医師から説明されてましたよね。そこでは実際の「カプセル内視鏡」の性能を踏まえているのに、犯罪のトリックの部分では「カプセル内視鏡」の性能を無視して、ドラマを作っちゃったというわけです。(※その件については原作小説の通りとなっています)

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「カプセル内視鏡」と受信機の入ったバッグとの関係は説明がつくのか?

カプセル内視鏡のデータを受信するデータレコーダー
画像出典：ResearchGateのホームページより

「カプセル内視鏡」を使用している人は、上記の様なデータレコーダーも常に身に着けておく必要があります。「カプセル内視鏡」とデータレコーダーが常にデータの送受信を行っているためです。「カプセル内視鏡」は体内で撮影したデータを常時送信して、データレコーダーがそれを記録しています。「カプセル内視鏡」とデータレコーダーはどの程度まで離れてデータの送受信が可能かは製品のメーカーごとに様々ですが一般的には数メートルが限界と言われています。

今回のドラマ「風間公親ー教場0ー」第9話「橋上の残像」では、被害者が肩掛けバッグにいれていたデータレコーダーが橋の上から落下、橋の下を通過中だった列車の屋根の上に落ち広島県まで運ばれ、再び事件現場近くの操車場に戻ってきた際にその肩掛けバッグが発見、回収されたというシチュエーションになっていました。その間、「カプセル内視鏡」とデータレコーダーとがデータの送受信が出来ない距離に離れてしまいました。

なので、橋の上で被害者の持ち物を物色する犯人の行動は映像に残らないのではないか? という疑問が浮かびますが、その点では一部の「カプセル内視鏡」はデータレコーダーとの通信が途絶えた場合、そのデータを「カプセル内視鏡」本体に一時的に記録してデータレコーダーが再接続された際にそのデータを送信するという機能を持った製品もあるとの事。

なので現実的に、データレコーダーが現場から遠くに運ばれた件は、現実の世界でも説明がつくようになっていました。

まとめ

ドラマ「風間公親ー教場0ー」第9話／「橋上の残影」を観て、このストーリーで描かれる犯罪の決定的証拠として扱われた「カプセル内視鏡」の画像について、実際のところあんなふうに撮影できるものなのか? について調査してみました。

刑事モノドラマのオチとしてはかつてなかった画期的な発想をもって描かれ、大変な衝撃を呼ぶものでしたが、実際の「カプセル内視鏡」にはそういった性能は備わっていなかったことが判明しました。要するにフィクションだったわけです。ちょっと残念な気持ちになっちゃいますよね。なんだ、フィクションなのか～って。。。ドラマを観ていて、

えっ!? そんな事ある?!

と思われた視聴者のは、即、「カプセル内視鏡」についてネット検索されたことでしょう。。。この記事はそんな視聴者の方たちに、いち早く疑問を払拭するために書かせていただきました。ドラマを観ていて、モヤモヤした疑問が残ると気持ちよくないですからね～。スッキリした気分で就寝したいですからね。もしこの記事がお役に立てていたら何よりです。

ドラマの出来としては、正直な所、中込兼児刑事役の染谷将太さんのヤサグレた演技がちょっと鼻につきましたね。ヤサグレているのに妙に口数が多く、ドラマの進行をセリフで説明しようとしている感じにちょっと違和感を持ちました。原作小説では担当刑事は中込刑事とは別人でヤサグレてもおらず普通の人物でした。

ドラマは事件の描き方も原作小説よりもかなり雑で、「カプセル内視鏡」をつかった証拠(現実にはフィクションでしたが) が劇中ではもっと強調されててもよかったなと感じました。ちょっともったいなかったですね。1時間しかない放送時間に要素を入れ込み過ぎて、全体的にドラマに深みが無くなっている感じがしました。

第10話「指輪のレクイエム」は恐らく中込刑事が担当する最後の事件となりますが、原作小説の方でも事件としてはあまり盛り上がりそうもない内容なんですよ。第10話の被害者が「まだら認知症」を患った妻という事なので、認知症の母を抱える中込刑事と絡めて見せ場は作られるんでしょうけど、ちょっと不安な要素が大きいです。。。

盛り上がりに欠ける部分は、意識不明で入院している遠野刑事に何かあるみたいなことが挿入されるのかもしれません。。。今後の展開に注目です!

第10話「指輪のレクイエム」の予告