2023年2月10日に滋賀県立琵琶湖博物館で大型水槽の破損事故が発生。直径5.1m、高さ3.8mの水槽から約100tの水があふれ出しました。大型の水槽破損と言ったら、2022年12月にドイツのベルリンの水族館(正確には水族館に併設されたホテルのロビー ) の大型水槽の破損事故が頭をよぎった方も多かったと思います。実はこの2つの水槽には驚くべき共通点が存在しています。その共通点についてまとめました。
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滋賀県立琵琶湖博物館の大型水槽破損とドイツ水族館の巨大水槽破損の共通点
2023年2月10日に滋賀県立琵琶湖博物館で発生した大型水槽の破損事故と、2022年12月16日にドイツ、ベルリンの水族館に併設されたホテル(ラディソン コレクションホテル・ベルリン)のロビーに設置された巨大水槽「アクア・ドーム」の破損事故にはいくつかの共通点が存在します。最も注目すべき共通点は、
どちらも、自立型円柱水槽だったという点です。
自立型円柱水槽とは、壁面に埋め込まれた窓の様な水槽ではなく、来館者が水槽の周囲を360度周回可能な柱状の水槽のことです。
滋賀県立琵琶湖博物館の大型水槽
水槽破損の琵琶湖博物館、入館料を減額 展示室閉鎖で(京都新聞)#Yahooニュースhttps://t.co/gYOxxL0qn7
— ミズトリヒロユキ (@free_fowls) February 14, 2023
滋賀県立琵琶湖博物館の円柱水槽のサイズ
直径 5.1m
高さ 3.8m
水量 10万リットル(100t)
アクリル板の厚み 4cm
ドイツの巨大水槽「アクア・ドーム」
ドイツの巨大水槽「アクア・ドーム」のサイズ
直径 11.5m
高さ 16m
水量 100万リットル(10000t)
アクリル板の厚み 18~22cm
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アクリル製の自立型円柱水槽の特徴
円柱状の水槽は、中に水を満たすとアクリル板にたわみが発生するものなんですよ。このたわみはアクリル板が薄ければ薄い程大きくなるので、アクリル板の厚みを増していくことで最小限に抑えることが出来ます。滋賀県立琵琶湖博物館のアクリル板の厚みは4cm、ドイツの巨大水槽「アクア・ドーム」は18~22cmと規模に応じたアクリル板の厚みになっていました。そして常に水槽の内側から外側方向に水圧がかかり続けます。
アクリルは強度のある素材ではありますが、
原理としては、子どもの玩具の「水風船」と同じことです。
そしてこの水圧が
今回の水槽破損の原因と考えられます。
大型の円柱水槽はその大きさから工場で一体成型で作る事が出来ないので、パーツパーツを接着して、水槽の大曲面を作り出しています。アクリル板のつなぎ目部分は粘度の高いアクリル材を接着剤として使用します。(アクリル板の重合接着) しかし、この重合接着の寿命は一般的には約10年ほどと言われています。
今回破損した滋賀県立琵琶湖博物館の大型円柱水槽は設置されたのが1996年で、27年経っています。2022年に破損したドイツの巨大水槽「アクア・ドーム」が設置されたのは2003年でこちらも20年経過していました。という事は、
水族館用に使われる重合接着でも、
20年で
限界!!
水槽を破損させるほど劣化する、
という事なんですよ。
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一般的な通路に水槽が並ぶ「窓型」の水槽などは、壁や柱を利用して水槽の四辺を押さえる事が可能ですが、自立型円柱水槽は支えを配置することができません。水族館の水槽も設置したら未来永劫使用できる、というものではないという事です。上記の2つの自立型円柱水槽破損事故から学べることは、設置してから20年が経過する前に、自立型円柱水槽のリニューアルを検討すべき、という事なんですよ。
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まとめ
2022年12月に起きたドイツの「アクア・ドーム」の破損事故の際は、当時のドイツの気温が氷点下だったことなどが影響しているかもと言われていましたが、今回の滋賀県立琵琶湖博物館で破損した水槽も、規模は違えど同じ形状の自立型円柱水槽だったことから、気温は関係ないかもしれません。水族館の自立型円柱水槽のアクリル板が常時かかり続ける水圧に耐えられなくなるのが20年程なんじゃないか、という事のようです。
いろいろ問題があるので名指しはしませんが、自立型円柱水槽を設置した水族館は国内にまだいくつもあります。今回の事故でこの件に気付いた自立型円柱水槽のある水族館関係者はゾッとしているはずです。自立型円柱水槽の設置はかなり大掛かりのはず。経年劣化が疑われる自立型円柱水槽の撤去もかなりコストがかかるはずです。事故が起きてしまつた場合の施設のダメージも相当なものでしょうから、「対策する」としても「対策しない」としてもどっちみち莫大なコストがかかるという。。。
今後は自立型円柱水槽を設置する水族館は減るでしょうね。ちょっとリスクがありすぎますよね。
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